「ルーブル美術展」

国立新美術館ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」が開催されています。
パリのルーヴル美術館のコレクションの中からの厳選された83点を通して、16 世紀から19 世紀半ばまでのヨーロッパ風俗画の展開を辿ると言う興味深い企画です。

協賛企業から特別招待券を頂いたので昨日行って来ました。
美術館が閉館した後に観ることの出来る招待状でしたので、ゆっくりと作品を味わうことが出来ました。

「16世紀から19世紀半ばまでの風俗画」とは、人々の日常生活の情景を描いた絵画のことです。制作された社会の状況や世相を反映し、日常の装いのなかに、複雑な道徳的・教訓的な意味が込められていることもあります。これらを読み解いていくことも、風俗画ならではの楽しみといえます。

18世紀頃まで風俗画は低い絵画と見なされていたそうです。
その頃最も高いジャンルが歴史画や宗教画で、それに続く形で肖像画、風景画、そして特に低俗なのが”静物画”だったそうです。
この中に風俗画は含まれてもいません。当時風俗画は目向きもされなかったジャンルの絵画だったようです。


ルーヴル美術展は以下の流れで鑑賞できます。
ルーヴル美術展の構成
プロローグ―風俗画の起源、絵画のジャンル
第一章―労働と日々 ―農民や商人など働く人々の日常を描いた作品が展示されています。
第二章―日常生活の寓意(グウイ) ―風俗描写を超えてバルトロメ・エステバン・ムリーリ第三章―雅なる情景 ―日常生活における恋愛遊戯ョ『物乞いの少年』
第四章―田園の風景 ―日常生活における自然クエンティン・マセイス『両替商とその妻』
第五章―室内の女性 ―日常生活における女性
第六章―アトリエの芸術家 ―アトリエでの芸術家

今回の一番のみどころは、17世紀オランダを代表する画家フェルメールの円熟期の傑作、《天文学者》の初来日。第二次世界大戦中にはヒトラー率いるナチス・ドイツの手に渡るという数奇な運命をたどった作品です。

ヨハネス・フェルメール天文学者
          

広告には載っていなかったのですがとても面白かった作品。  この作品の前では笑いが・・・
ヘリット・ファン・ホントホルスト『抜歯屋』

美術展で作品の前で笑いが起こることは今まで経験したことがありませんでしたが、音声ガイドでこの絵の説明を聴いて、声を出して笑い方が沢山いらっしゃいました。
          
かつてヨーロッパでは免許がなくても歯医者として仕事をすることができました。
この絵の右側ではイカサマな歯医者が患者の歯を抜いています。
絵の左側には抜歯の様子に釘付けになっている人たちと、そのうちの一人の持ち物に手を伸ばす盗人が描写されています。
この歯医者と盗人はグルになって盗みをはたらいているのです。
そして抜歯されている患者はきっと、「痛みはない」というような誘い文句につられてしまったのでしょう。
フランスには”歯抜きのように嘘をつく”ということわざがあるそうです。まさにこの絵にぴったりな絵です。
甘い誘い文句に惑わされてイカサマな歯医者にひっかかってしまった患者とその光景に見入って持ち物を盗まれてしまう人。甘い言葉に惑わされなければこんなことにはならなかったはずです。

今回の美術展に限らず、事前に主だった作品の鑑賞ポイントを調べていくとより楽しく作品を味わうことが出来ます。そして音声ガイドでの説明は外せません。

以下音声ガイドで詳しい説明を聞くことが出来た作品の一部です。
音声ガイドでの説明は長くなるので今回ご紹介しませんが、特に今回の風俗画の鑑賞では説明を聞くと、作品の裏にある時代背景、作者の意図が読み解け楽しく鑑賞することが出来ます。

リュバン・ボージャン『チェス盤のある静物
          
クエンディン・マセイス『両替商とその妻』
          

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『物乞いの少年(蚤をとる少年)』
          
          
ジャン=バティスト・グルーズ『割れた水瓶』
          
                   
ピーテル・デ・ホーホ『酒を飲む女』
          

フランソワ・ブーシェオダリスク
           
ティツィアーノ『鏡の前の女』
          
                    
ジャン・シメオン・シャルダン『猿の画家』
          

    
絵画鑑賞の後ロビーでは室内楽が演奏され、軽食も用意されていました。優雅で楽しいひと時を過ごすことが出来た当別招待券でのルーブル美術館展でした。
お土産で頂いた図録集をめくって見ると 音声ガイドの説明にはなかった作品で見落としたものが何点もありました。(観たけれど忘れてしまっているのかもしれません。)

図録集には詳しい説明が書かれています。しばらくの間 この見ごたえのある図録集は身近に置いて
解説を楽しみたいと思っています。


          ルーヴル美術館展 
          東京開催:2015年2月21日(土)〜6月1日(月)…国立新美術館にて
          京都開催:2015年6月16日(火)〜9月27日(日) …京都市美術館にて