古い伊万里  染付傘形皿

早いもので西日本では今月中旬あたりから、梅雨に先駆け、走り梅雨があるかもしれません。
走り梅雨とは梅雨に先立って、ぐずつく天候のこと。
家に飾るお皿も藤の花模様の次は傘の模様の小皿を飾ろうと思い、出してみました。

このお皿は円形を開いた唐傘に見立て骨を丹念に墨はじきの技法を使って描いたものです。
江戸時代後期に作られたものです。
斬新で粋ですね。

                    江戸時代後期            長径16,5㎝         
          

          

墨はじきとは
墨を用いて白抜きの文様を描く技法。通常磁器染付の藍地に白線の文様を施す場合に用いる。
制作の工程は、素地に墨で文様を描き、その上から全面に呉須で着色すると、墨は膠(にかわ)質を含むため吸水性がなく呉須を弾く。これに施釉して本焼きすると、墨は高温で焼け抜け、
墨で描いた文様が白い文様となる。墨によって呉須の藍色の着彩を防ぐため、墨の部分は結果的に白磁の白さを見せることとなります。

お皿の表面にいくつか傷 白く見えるものは、「ひっつき」の跡です。とても残念です。
裏には殆ど分からないくらいの貫入が1本入っています。引っ越しの時に入ったものか、前からあったものか分かりません。

引っ付きとは窯の中で出来るキズで、窯の中で他の物とくっついてしまった跡のことです。

貫入は表面に浅いヒビが生じているもの。意図的に技巧上の効果をねらったものと、後から傷ついたものがあります。

ここで陶器の傷について少し触れてみます。
陶器の傷には あたり・割れ・スレ・ほつ・二ュー・窯キズ・フリモノ・煙・トリアシ・釉切れなどがあります。骨董屋さんに行くと良く使われる言葉です。

少々わかりにくい言葉を説明します。
二ュー・・・表から裏までヒビが通っている状態。
ほつ・・・一部分が欠けている事。
煙・・・素地の上に出来たもやっとしたシミ。
トリアシ・・・高台の内側に放射状に出来たヒビ。鶏の足のように見えるのでこう呼ばれました。

面白いことに傷のように見えても、無傷として扱われるものもあります。
虫食い・目跡などです。
虫食・・・口縁の釉薬が剥がれて胎土が見えることです、虫が蝕んだように見えるのでそう呼ばれています。茶人などが鑑賞の対象として楽しみます。 私も虫食いは好きです。
目跡・・・は前に触れましたが、ハリ支えの跡の事です。

焼き物の傷や染みの跡も侘び寂びの味わいとして楽しむ日本人の感性 素晴らしいといつも感じます。