ミニアチュールのブローチ
まだ疑問が残っているものの、前からご紹介しようと思っていたミニアチュールのブローチをご紹介します。ブローチと言えど、こんな美人を付けて歩くのはさしさわりがあるので、家に飾ってあります。
前にご紹介したジュエリーボックスに入れたり、ピンで壁に止めると素敵なインテリアになります。
このブローチは購入した時にエナメルのミニアチュールと説明されて購入したものです。
エナメル・ミニアチュールは透明あるいは不透明なガラス物質を溶かし、金、銀、銅などの金属板(希に磁器)に描き、炉に入れて高い温度で焼成したものです。色によって温度が違うので、多彩で美しい彩りのエナメルは高度な技術が必要とされます。
エナメルとは違うと言う疑問を感じ、今回西洋アンティークのお店に行きお伺いしたのですが(先日2件と書きましたがもう1件あらたに行き)、分からないと言うことでした。
素人考えですが、これはエナメルではなく、べラム紙に描かれ上からガラスの蓋を被せたものだと思います。
絵の具で描くミニアチュールは、退色を防ぐ為にガラスでカバーする必要がありますが、絵と違いフレームを外すことが困難なので、ガラスでカバーされているものかどうか正確に確認することは出来ません。
側面をルーペで見ると台紙のようなものとその上にガラスの板のようなものが見えます。
ルーペで見ても良くわからないので、そっとフレームの側面から針で台紙らしき物をうごかしてみました。かすかに絵も一緒に動きました。
おそらく象牙ではなく紙に書いた作品だと思います。
19世紀末にはベラム紙(犢皮(とくひ)紙、羊皮紙よりも薄い)に描く方法も用いられたと資料で読んだことがあるので、19世紀末以降のものでしょう。
フレームに細かいシードパールが施されています。
シードパールは自然に出来る小さな真珠の事です。
小さなパールは芥子の種に似ているので、シードパールと呼ばれます。
このブローチはシードパールの真ん中に穴をあけ金の糸のようなものでつなげています。こんな小さなパールにどのように穴をあけたかは定かではありませんが、当時紅海などで採れたシードパールをインドに運びインド人が穴をあける作業をしたそうです。
一般的には馬の尾の毛を通したようですが、持っているブローチは細い金の糸(金属)で、つないでいるのがかすかに見えます。
糊で付けた物も多い中、このブローチは本当に丁寧に作られています。
ブローチの出来た年代を推測するのには、使用する、留め方式やピンでもおおよその事分かります。
19世紀の半ば(ビクトリアンの時代)のブローチは、写真のようにピンの長さが、ブローチ 本体より、長い傾向にあります。
留め具でも分かります。今回ご紹介したブローチ(写真右)は、ピンを入れてから、留め具をぐるっと回してブローチが外れるのを防止する方式ですが、このような留め具が出来たのは1910年以降です。それ以前は写真左のように留め具にピンを引っかけるだけの方式でした。
シードパールは1880年頃に入ると、あまり使われなくなりました。そのような事等を考え合わせ、このブローチは1910年代に入ってすぐのものだと推測しました。
ミニアチュールは写真の無い時代15世紀末にフランスで肖像画を特別な階級の贈答用として、金属板・象牙・革等に精緻で小さな絵を描いたもので作られたのが始まりです。
その後16世紀末にはアクセサリーが作られるようになり、枠を宝石が飾るようになりジュエリーとなります。一時衰退しますが18世紀中期のロココ趣味で再び人気を取り戻します。
19世紀半ばの写真の発達につれ次第に姿を消していきます。
私の推測も大きな間違いをしているかもしれません。
疑問はまだまだ残りますが、多くのお店が出店しているアンティークフェアー等を覗く時にも
このような疑問を持ちながら見て歩くのも、また違った楽しさが加わります。