鼻煙壷(びえんこ)

昨日孫文の碑のことを書いておりましたら、台湾旅行で買って来た鼻煙壷を思い出しました。宿泊した「圓山大飯店」のショップで見つけた物です。以前から数点持っていたものに是非加えたいと思う1点でした。

台湾で購入した鼻煙壺 (高さ7.5cm) 
         

鼻煙壷は嗅ぎ煙草を入れておくための容器です。その形や色は様々、素材も金や銀や錫の金属製・玉や瑪瑙等の貴石、白磁などの陶器や硝子やエナメル彩・象牙等々と、様々な素材が使用されました。 比較的小さな容器で、中に嗅ぎ煙草をすくうための匙がついています。匙の材料も色々です。

嗅ぎタバコとは煙草の粉を鼻の内側の粘膜に付着させてニコチンを摂取する喫煙方法だそうです。嗅ぎタバコを喫煙している姿は見たことがありませんが、想像すると何だかアヤシイ姿が思い浮かびますね。鼻煙壷はアヘンなどをかぐ時に使われた時期もあったそうですが、最初は上流社会で使われていたものなのです。

          

表と裏に表面全体に丁寧に模様が入っています。鼻煙壷には装飾なども施されているので観賞の対象にもなったそうです。中国で清の時代に大流行しましたが、現在は日用品としてはあまり用いられていません。

          
          

          
          

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こちらの鼻煙壷は中国に行った時に購入した物です。古いものだと言われたのですが、古いものには思えません。古くても新しくても楽しい図柄です。

          

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歴史
嗅ぎ煙草は紙巻たばこよりはるかに長い歴史をもつ喫煙方法のひとつです。
煙草の原産地の一つと考えられているアメリカ大陸では、たばこの葉やハーブ、野草などを粉にして吸う習慣がありました。コロンブス(1492年)以降、殖民者たちによってヨーロッパにもたらされ、1641年には はやくもスペインに嗅ぎ煙草の工場ができています。

ジャン・ニコ(ニコチンは彼の名前から来ています)がフランスの王妃カトリーヌ・ド・メデシス(1519〜1589年)に薬草として献上し、頭痛薬、気付け薬として使われました、この使用法がスナッフィング、これ以降フランスの宮廷では嗅ぎ煙草が流行しました。ナポレオンやマリーアントワネットなどは嗅ぎ煙草の愛用者で、上品なたばこの楽しみ方として上流階級にもてはやされたそうです。
その後一般庶民にも流行りました。
ヨーロッパでは、嗅ぎ煙草は「鼻煙箱」と呼ばれる装飾された箱に入れられていました。

中国では
新しい嗜好品として、中国の明の時代(1368〜1644)にイタリアからから中国に伝わり、 その目新しさと、「百病を鎮める」薬効があると言われた嗅ぎ煙草は、上流社会を中心に中国でも大流行しました。中国では(その頃、海外と盛んに貿易を行っていた地域は、温暖で湿潤な華南地方が多かった為) 高価な嗅ぎ煙草を湿けらせない為に壷状の容器に入れられるようになりました。
はじめは実用的なガラスの小瓶を使っていましたが、これが鼻煙壷の原型となり それがその後の清(1636〜1912)時代の極盛期を経て、携帯用の容器から芸術性の高いものへと変化していきます。

北京の宮廷内に鼻煙壺を専門に作る工房が置かれ、 そこで作り出される『皇帝の鼻煙壺』は、
『官料鼻煙壺』と呼ばれ、主に家臣への褒美や外交時の贈り物などに使われました。

逆戻りをした鼻煙壺は、ヨーロッパの香水瓶に影響を与え今もその形を伝えています。