端午の室礼

端午の節句は元来 女性の節句だった!

先日「松風園」でお庭を拝見した時に「室礼講座」が行われていることを知りました。
「室礼(しつらい)」とは、季節行事や人生の節目に、室内に季節のお花や野菜、果実などの品々を
しつらえること。殺伐とした今の世の中 せめて自然や季節の移ろい、節目、節目を感じる心豊かな時間を過ごしたいと思い「端午の室礼」講座に参加しました。

松風園に足を一歩踏み入れた途端、なぜかいつもとは違う私になっています。
背筋が伸び、立ち振る舞いが優雅になったような・・・・・。

          

          

室内のあちこちに、かわいらしい端午の室礼が施されていました。
庭園から流れ込む緑の風に鯉の飾りが泳いでいます。

鯉が滝を登りきると竜になると言う中国の故事から男児の立身出世を願って鯉のぼりは飾られるようになりました。

          

          


講師は「室礼三千」の専任講師宮田由美子先生。

堅苦しい講座と思っていたのですが、先生のお人柄か和気藹々とした雰囲気で講座が進んでいきます。

                       

講座はまず、「室礼」とは何かということから始まり、今回のテーマである「端午の室礼」の由来などをわかりやすく解説してくださいます。

農耕民族だった日本人は、季節の節目となる時期に、自然の恵みに感謝し、供物をささげてきました。それが年中行事となって人々の暮らしに定着しました。このような年中行事の目的や内容に合わせて室内に季節の作物や草花などをしつらえ整える習わしが「室礼」で、古くから連綿と受け継がれ、時代に合わせ変化したものです。「室礼」を行う代表的なものに、1月1日の「正月」、3月3日の「上巳(じょうし)」、5月5日の「端午」、7月7日の「七夕」、9月9日の「重陽」の五節句があります。奇数が重なる日には禍が起こるとされた中国の古い言い伝えによって、これら五節句には穢れを落とすための儀式が行われるようになりました。

「男の子のお祝いの日」と思っていた端午の節句が女性の行事だったことを初めて知りました。

もともと日本には、田植え月の五月に「五月忌み」という日本古来の行事をしていました。昔は神聖な行事である田植えは早乙女がするものとされ、田植えをひかえて物忌み、一定期間、不浄を避けて心身を清めることをしていました。

やがてここに端午の節句が結びつき、早乙女は菖蒲や蓬で屋根を葺いた小屋に前夜からこもっては菖蒲酒などで穢れを祓い、神聖な存在になってから田植えに臨むようになりました。このような
女性のためのおまつりであり、当時の女性にとっては堂々と休める嬉しい日でもあったのです。

菖蒲には邪気を払う力があると考えられ、軒下に下げたり菖蒲湯に用いられてきました。

鎌倉〜江戸時代になり男の子のおまつりに
その後、武士の力が強くなると、「菖蒲」が武を尚(たっとぶ)「尚武」や「勝負」に通じ、葉の形が剣に似ていることから、兜に菖蒲を飾ったり流鏑馬(やぶさめ)をするようになり、男の子のおまつりに変わって行きました。江戸幕府によって五節句のひとつに定められると、男の子が強く逞しく成長して立身出世することを願う行事として定着していきます。

そして、1948年から「子供の日」となりました。

          
こね鉢に竹の子等の野菜が盛られています。力強い室礼ですね。

          
固い地面を砕き、力強くまっすぐのびるタケノコは子供の成長を願うもの。
虫も活発になるこの時期、ショウガは虫除け。
茄子は物事が成しえるよう。
菖蒲は香りたつように
赤ピーマンは厄除け、シーサーの対と同じ。

          

室礼の掛け軸の鯉のぼりはなるべく高い所に飾るとよいそうです。(屋根より高い鯉のぼり〜♪)
菖蒲やヨモギの香り、鯉のぼりの吹き流しの5色の色や矢車が立てる音は
厄除けの意味があり、邪気を払い無病息災を願う気持ちが込められています。

          

          

室礼に用いられる物にはそれぞれに由来や意味があるのですね。

柏餅・・・・柏の木は新芽の出るまでは親の葉が枯れ落ちることは無いので
子供がたくましく育つように見守る親心、そして、その家の孫繁栄に結びつくと言う縁起の良さ。

ちまき・・・中国の「屈原の故事」から無病息災。

びわ・・・初夏の果物からひとつ。

鎧兜や武者人形、鯉のぼりには、男児の成長、家の存続を願う心が込められています

講義の後に、各自で兜を作ります。上質な手漉きの和紙を心を込めて丁寧に折ります。
簡単な兜ですのに、なぜかとても緊張して折りました。

          

兜の房(紐)は代々続くように、そして1ヶ所結ぶのがポイントです。
房は祝い事は右回りで置き、左回りは仏事。

最後にお抹茶とお茶菓子のおもてなしも頂き、とても楽しい講習会でした。
ワラビの形をした落雁、麩煎餅には兜が焼印されていました。

          

自然と命が密接につながっていることをもう一度振り返り、ささやかでも季節の行事を自分の生活に取り込み、毎日の生活に感謝し明日に、そしてその循環が子供の未来につながって行くように祈りを込め、日々を暮して行きたいと思います。