スリランカの旅 シギリアロック

3日目後半
ジャングルの中に突如として姿を現す赤褐色の岩肌。景観だけでも奇怪な岩山ですが、5世紀にこの岩山に王宮を築いた狂気の王の伝説も実に興味深いものがあります。

シンハラ王朝の王の息子カッサパ1世（母は平民出身）は、異母兄弟のモッガラーナ王子（母は王族出身）に王位継承されるのを恐れ、477年に父親を殺害し王権を奪取します。しかし弟モッガラーナに王位を奪還される事を恐れるとともに、父親を殺害した罪の重さに苦しめられ、首都であったアヌラーダプラを離れ、より安全なシギリヤへと遷都しました。

王は罪の意識と弟の復讐におびえ続けました。怯える王が、王宮の場所に選んだのは高さ200mの岩山の頂上。7年間をかけて王宮を完成。岩山の周辺には復讐を恐れた王がワニの大群を放ちました。

カッサパ王が在位にあった477年から495年の18年間、シギリアは複雑な市街と防衛機能を併せ持つ都として発展しました。

その後弟モッガラーナは、亡命先の南インドから軍隊を引き連れ兄に戦いを仕掛けます。当初はカッサパ王が優勢であったものの後に劣勢に転じ、観念した王は喉を掻き切り自害、495年、シギリヤは陥落します。

王位についたモッガラーナはシギリヤを仏教僧に寄進し、再び都をアヌラーダプラへと移しました。シギリヤは13世紀から14世紀頃まで修道院として存続しますが、徐々に衰退。

建設から1400年の後、イギリス統治下の1875年に、イギリス人によって岩山に描かれたフレスコ画である"シギリヤ・レディ"が発見されました。

古都シギリヤは、1982年、世界遺産（文化遺産）に登録されました。
　　　　　　　　

ゲートを入ると、岩山に向かう直線の参道の両側に、「水の庭園」と「岩の庭園」が広がります。麓には堀が設けられ、石積みやレンガの遺構が整然と並んでいます。水圧を利用した自噴式の噴水まであり、今でも水を出すと言うから驚きです。
　　　　　　　　
庭園が終わると、岩が多くなり、階段が始まります。階段に沿って、岩の窪みを利用した遺構が残っています。

チップ欲しさのヘルパーが、何人も近寄って来ます。自力でのぼることを告げ、黙々と階段を登ります。
　　　　　　　　
岩山に向かって歩を進めると洞窟が見えます。中には仏陀の胸像があります。
　　　　　　　　
この下を通り進みます。
　　　　　　　　
猛毒の蛇が！
細い緑色の毒蛇が　突如横の岩から鎌首をあげて私たちのすぐ目の前に飛び降りて来ました。
三角の頭をしたその蛇は、本来この周辺には生息していない猛毒を待った蛇だそうです。
あわてて飛び退くと毒蛇は階段をすごい速さで下って行きます。ガイドさんは大焦りで
「退いて、退いて」と大声で下の人たちに叫んで知らせます。
噛まれたら神経をやられてしまうそうです。怖かった！

この後緊張しながら１歩1歩登って行きます。

階段は全部で1200段。振り向くとだいぶ歩いて来たようですが、まだ何倍も登らなくてはいけません。
　　　　　　　　

岩山の入り口から20分ほど登った所にまわりを金網で囲ったらせん階段があります。
ここを登るとシギリア・レディたちの姿が表れました。
5世紀の作品とは思えないほど美しい風合いを醸し出しています。この美女のフレスコ画は元々は、幅140ｍ×高さ40ｍにわたって、岩山の壁面に500人ほど描かれていたそうです。

現在はわずかに18人。

カーシャパ王は殺害してしまった父の霊を鎮めるためにこの美女たちの壁画を描かせたと言われています。
　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

ミラー・ウオール
美女のフレスコ画の下に位置する回廊の壁は、ミラー・ウオールと呼ばれています。

触って見るとつるつるした感触。鏡のような輝きを持つのでこの名前が付きました。高さ３ｍのこの壁は煉瓦を芯に漆喰がぬられその上に多量の卵の白身と蜂蜜と石灰を混ぜた物が上塗りされ、丹念に磨きあげられ光り輝くように造られたそうです。

又この壁にはダートゥセーナ、カーシャパ、モッガラーナの興亡物語の叙情詩や、壁画の乙女たちの姿や岩山の雄大さを称える詩が彫られています。これらは主に７〜11世紀の間にシンハラ文字で彫られたものです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　

ライオンの入り口
階段をさらに上がった岩山の広場に、ライオンの爪の形をした宮殿の入り口があります。以前は足、頭部があり、ライオンが大きく口を開け座った形になっていて、階段を登って行くと、ライオンの喉に飲み込まれるような感じになっていたのではないかと考えられています。
　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ライオンの入り口から階段を上がって行くと細い急な階段が続きます。

登り始めてからおよそ40分。約1200段という階段を上り切ったそこは夢の跡。

頂上は面積1.6ヘクタール。王宮、兵舎、住居、ダンスステージの跡が見られます。少し下には王のプールもあります。
　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　

風の音が聞こえます。王の孤独がひしひしと伝わって来るようでした。

帰りは周囲の景色を楽しみながら階段を下りました。

　　　　　　　　　　　　上から眺めたライオンのテラス風景
　　　　　　　　

　　　　　　　　

イグアナがいます。
　　　　　　　　
ここにも
　　　　　　　　

コブラ岩
　　　　　　　　　　　　　　　　

雄大な自然に刻まれた　人間の野望と苦悩。
それにしても王はこの王宮で心休まる時があったのでしょうか。
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実は午前中に止んでいた雨。シギリヤロックに向かっている時に又大雨が降りだしたのです。添乗員さんとガイドさんの気転と予測で、ろうけつ染め工房での見学時間を延ばしシギリアロックに到着した時には青空に。無事念願のシギリヤロックに登ることが出来たのです。