コーカサスの旅 カスピ海って海?湖?
ガバラに向かうバスの中で、先ほど見たカスピ海の事を考えていました。
「殉教者の小道」公園から眺めた美しいカスピ海。
添乗員さんから、カスピ海の水は舐めないようにと言われていたのですが、
朝、うがい用のペットボトルの水まで持って、好奇心の強いツアー参加者が、カスピ海の水をなめて見たいと出かけていきました。
湖なのに塩辛い? どの位塩辛いのか確かめて見たい気持ちもわかります。
カスピ海の面積はなんと約44万 km2。日本の面積をしのぐ大きさです。
どう見ても湖には思えません。
結局汚れている現実を見て、なめることはあきらめて帰って来られました。
湖と言われているカスピ海。しかし、カスピ海は海だと主張する国もあります。
地図を見て分かるように、カスピ海は、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、イラン、アゼルバイジャンの5カ国に囲まれています。
カスピ海が「海」ということになれば、「国連海洋法条約」で「排他的経済水域」、いわゆる200海里水域が認められるので、石油資源は沿岸国のものになります。しかし、「湖」ということになれば、慣習的に沿岸国で均一に分割ということになり、石油は共同資源という扱いになるのです。
5か国のうち、イランを除く4カ国は石油埋蔵が確認されています。この4か国のうちトルクメニスタンは中立的立場をとっています。3か国は当然「海」派です。イランは「湖」となれば石油の利益が分配されることになるし、OPECの主要加盟国としても、非加盟国である近隣国の石油産出量が増えることは面白くないという政治的判断も影響しています。
さらに問題を複雑にしているのは沿岸国ではないけれど、このコーカサス周辺で強い影響力を持つトルコがアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタン)をバック・アップしているのです。
カスピ海が湖であるとすれば、その湖底に眠る油田資源は、周辺5カ国の共同管理ということになります。
カスピ海周辺国家間では10年に及ぶ領海確定協議が続いています。カスピ海を海ととらえるか湖ととらえるかで、石油だけではなく、主に3点が問題となるのです。
鉱物資源(石油・天然ガス)、漁業そして国際水域としてのアクセス。とくに黒海やバルト海へ抜けるヴォルガ川とのリンクは内陸国であるアゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンにとって重要で、カスピ海が海であれば外国船の通過を許す国際条約が有効となり、湖であればその義務がなくなる。これには環境問題も関係します。
汚れていたカスピ海の水を思い出しながら、政治的な問題で、湖から海に変わってしまうかもしれない、美しいイメージを抱いていたカスピ海の事を考えていました。