アンティーク ミニアチュール 

ミニアチュールのジュエリーのご紹介の前に、絵画の方を先にご紹介します。

このミニアチュールは19世紀後期のイギリスの作品です。
ミニアチュールとは細密画のことで、きわめて緻密な描法による小さな絵の事です。

               象牙  15,5㎝  13,5㎝   (絵部分  10cm 8cm)
          

象牙に特殊な筆で(猫の毛を用いたとも言われています。)細部まで描かれています。
丁寧に書かれている細かい花や葉、犬や羊の毛並み、ついついルーペを取り出して小さな世界を覗いてしまいます。
          

ミニアチュールは16世紀にはグァッシュで羊皮紙に描かれていましたが、やがて金属板にエナメルで描く手法も一般化します。17世紀には薄い象牙板にグァッシュで描く手法が流行、19世紀末にはベラム紙(犢皮(とくひ)紙、羊皮紙よりも薄い)に描く方法も用いられました。また、16〜17世紀のイギリスで流行した肖像画ミニアチュールは、ヘンリー3世の宮廷画家ルカス・ホーレンバウトによって創始されました。18世紀フランスにパステル画を伝えたイタリアの女流画家ロザルバ・カリエラも象牙に肖像を描くことを得意とし、フランスに流行させました。肖像画のほか風景、花、恋人たちなど、その主題も多様化しています。

*グァッシュとは
水彩絵の具の一種です。きわめて微粒子の顔料を、アラビアゴムのつなぎ剤で練ったもので、展色性を増すためにシュガー・エステルや蜜(みつ)などを添加します。グァッシュの不透明で光沢のない質感は、透明水彩とは非常に対照的な効果を発揮し、羊皮紙、板、紙などの基底材に塗ることができます。その歴史は古く、中世には手写本の類にも使用され、またやや下っては油彩画の下塗りにも用いられました。マチス、ルオー、モディリアニ、シャガールら、近代においてこの画材の発色と質感を好んだ画家は多いのです。今日では油彩画の剥落(はくらく)部分の補彩に用いられることが多いが、これは、補彩した上から油剤を施すことにより油彩に近い質感が得られ、また必要に応じて容易に除去することができるためです。

この絵を見ているととても幸せな気持ちになります。

絵は素敵なのですが、額装をもう少し変えようと思っていた時に、たまたまTV「なんでも鑑定団」で鑑定をしていらした岩崎紘昌氏にお目にかかる機会があり お伺いしたところ、このままの方が絶対に良いとアドバイスを頂き、そのまま大切にしています。
やはり、古いものはそのままの状態で残した方が良いのですね。

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注意事項として、象牙にかかれた絵はガラスでカバーされていますが、万が一額から出された時に決して水などに触れないように。絵が消えてしまいます。(手でも触れないように)
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こんなに素敵な絵が描かれた時代19世紀後期イギリスですが、その頃のイギリスと言うと・・・・・・・・
19世紀 後期ヴィクトリア朝時代は、イギリスが産業革命によって絶頂期をむかえた時代で機械生産によって多量に生み出される商品の原料調達と消費市場を同時に満足させるために、世界を植民地化する政策がとられました。

華やかなイギリスと思いきや、当時の庶民の生活は・・・・・

1870年に教育法成立。8歳から13歳までの義務教育が実施されます。19世紀前半までは、教育は上流階級だけのもので、庶民に教育など必要はないと考えられていました。1850年頃は男子の3分の1、女子の半分が自分の名前が書けなかったのです。 

1871年労働組合法成立。労働組合の法的地位が認められました。
イギリスは、他国に先駆けて産業革命を達成し、産業革命により、科学と産業が飛躍的に発展しましたが、これまでの人力による生産方法から大規模な工場での生産方法への変化は、物の生産数は飛躍的に増大した反面、産業革命の持たらしたものは、想像を絶するほどの貧富の格差でした。貴族と農民という主だった階級は、資本家と労働者に名前を変え、社会は、新たな貧富の差が発生しました。それまでは、労働基準法労働組合などなかったので、人々は、信じられない過酷な労働条件のもとで働かされていたのです。

18世紀後半に産業革命が起きて以降、ロンドンの人口が増加し、このミニアチュールが描かれた時代19世紀後半のロンドンの街の衛生状態はひどいものだったようです。
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19世紀末から20世紀にかけて生きた作者 コナン・ドイルが、その時代背景の小説として書いている「シャーロック・ホームズ」シリーズを読むとイギリスの当時の事が少しわかり、面白いかも知れません。一般庶民の生活レベルや貴族、や新興成金の生活など、服装、食、馬車の種類、住宅等DVD 等の映像で観ると当時の事がより鮮明に理解でき、その中で今はアンティークになって自分の手元にあるものを見つけるのも楽しいですね。