北欧の旅  グリーグの家

5日目後半(1)昼食後、グリーグの家の見学です。

市内から車で約30分 この付近にはたくさんのブナの木が植えてあります。よく見るとその中に幹が黒い 黒ブナ(イヌブナ)が見えます。塗料に使えるそうです。写真の黒い壁の家もこの塗料で塗られているそうです。
                   
しばら行くとブナの並木道が続きます。この並木道の先にグリーグの家があります。

グリーグの家
ノルウェーの偉大な音楽家エドワルド・グリーグが(1843〜1907年)が晩年1884年にベルゲンの近郊に建てた住家です。亡くなるまでの22年間住んだ白いビクトリア風の家はトロルハウゲン(トロルの棲む丘)と呼ばれて一般公開されています。(撮影可能でした)

フィヨルドを見渡すこの場所で、グリーグはいくつものピアノ曲を作曲しています。

入口にあるグリーグの顔のモニュメント
                    
グリーグ博物館 
博物館の中にはグリーグにまつわる資料や、彼が生きた時代のベルゲンに関する歴史展示遺品などが展示されていました。
        
グリーグの遺髪
                   
グリーグは従姉妹であり有名な歌手だったニーナと、彼女の両親の猛反対を押し切って結婚しました。
彼の歌曲のほとんどは、ソプラノ歌手であったニーナの声を思い浮かべながら作曲されたとも言われます。

長い結婚生活の間には、グリーグ夫妻はニーナの自由な生活、派手な交友関係から破局の危機も経験しますが、復縁旅行、終の棲家・トロルハウゲンの建設などを経て、伴侶としての絆を深めていきました。

グリーグは後年妻ニーナについてこのように語っています。
「私は素晴らしい声とたぐいまれな解釈力を持つ若い女性に恋をした。その女性が私の妻となり、生涯の伴侶となった。あえていえば、ニーナは私の歌曲の唯一の理解者であり、表現者だ」と。
        
コンサートホール「トロルサーレン」 
フィヨルドを見渡すこの場所で、グリーグピアノ曲をいくつも作曲しています。この下手には彼が仕事場に使用した小屋があり、フィヨルドに面した窓に向かって机が置かれ、左手にピアノ、右手に簡素なソファが、生前と同じように保たれています。
1985年にはこの小屋に並ぶようにして、200人収容のコンサートホール「トロルサーレン」が建てられました。
聴衆は、グリーグが作曲する時に眺めていたのと同じ風景を見ながらグリーグの曲を聴くことができるように設計されています。
        
コンサートホール入口に建つグリーグの等身大の銅像
        
銅像からもわかるように グリーグは身長約149cm(一説には154㎝とも)。とても小柄でした。
手が小さいのにもかかわらず、彼は9度以上の和音などは素早いアルぺジョで器用に弾き、生前は卓越したテクニックのピアニストとしても著名でした。
自作を携えヨーロッパを度々ニーナ夫人と共に演奏旅行をしています。

グリーグのひととなりをもう少し知るために
グリーグチャイコフスキー
チャイコフスキーグリーグ夫妻は、グリーグの親友のヴァイオリニスト、ブロズキーの自宅で初めて出会いました。この場にはなんとあのブラームスもいたのです。

グリーグと初めて会った時の印象をチャイコフスキーは「1888年の演奏旅行日記」の中で詳しく描写しています。

部屋に入ると「短躯の中年男で、肩の高さは左右不均衡、髪は前頭から後方に櫛が入れられていて、ほとんど少年のような容貌だが、口髭を生やしている。眼は並々ならぬ魅力をたたえた碧い眼だ」
「私は、我々がお互いに自己紹介をした時、私と不思議と気の合うこの人物が、以前から私の心を捉えていた暖かく感情的な曲を作曲した作曲家であることがわかり、心の底から喜びました。彼がグリーグだったのです。
そして、チャイコフスキーはニーナ夫人の事を次のように評しています。
グリーグによく似た、小柄な、ちょっと弱々しげだが、優しそうな夫人。とても優れた、完成された歌手。
しかもこんなに教養の高い夫人を見たことはない」と。

また、この時、先客のブラームスがブロズキーと「ピアノ三重奏曲(第三番作品101)」を練習していたところにチャイコフスキーは何の断りもなくズカズカと入ってきたので、ブラームスと気まずい雰囲気になったのを、グリーグ夫妻が和やかに納めてくれたそうです。

グリーグブラームス
ブラームスは1885年の夏に、ライプツィヒの音楽愛好家、ハインリヒ・フォン・ヘルツォーゲンベルク男爵邸でヨハネス・ブラームスと面会しています。その時ブラームスト短調の「ラプソディ(作品七十九の二)」を弾き、グリーグは「民族生活の情景(作品十九の二)」「ノルウェイの民謡による変奏曲形式のバラード」を弾きましたが、二人ともお互いの曲を気に入らなかったそうです。
        
コンサートホールの先にグリーグの家があります。
        
グリーグの家「トロルハウゲン」 
        
グリーグの家の中には、彼とその妻ニーナ・ハーゲルップの生いたちにまつわる品々がありました。愛する家族や尊敬する音楽家肖像画も飾ってありました。

なんと、音楽家肖像画の中にはあまり理解し合うこと事のなかったブラームス肖像画もありました。
                グリーグに贈られた月桂冠
                    
               
                   
              
        
グリーグが使ったピアノや家具に囲まれていると、彼が今でも生きて生活している空間に迷い込んだような感じがします。
        
        
グリーグは終世、手のひらに乗るぐらいの小さな蛙の置物や子豚のぬいぐるみを大切にし、寝る時も一緒だったそうです。
         カエルが展示してありました。豚は博物館に展示されていました。
                
あがり症だったグリーグは演奏会の時は、あがらないように、ポケットの中で蛙の置物を忍ばせ、そっと握りしめたそうです。本物は、ゴム製だったようですので、これはレプリカです。

卓越したテクニックを持つピアニストとしても有名で、多くの演奏会を行った彼の隠された一面を知ると、何故か急に親近感を持ちます。

子豚は博物館に飾ってありました。これもレプリカです。
                   
この地の自然をこよなく愛した彼は死後、遺言によりトロールハウゲンの住居の下にある湖を望む岩壁に墓が設けられ、一部の遺灰は湖に撒かれました。
        
好きな作曲家の1人、グリーグの家を見ることが出来た記念すべき日になりました。


グリーグの家の見学の後もベルゲンの観光はまだまだ続きます。