染付・蛸唐草文・松竹梅5寸皿

前回ご紹介した華やかなお皿よりも 実は使いやすいのは染付のお皿です。
その中でも人気の文様 蛸唐草をご紹介します。

                 時代が古いものほど蛸唐草が緻密です。
        
唐草文様の一種 蛸唐草文様は、渦巻き状の唐草の片側に、抽象的な葉の文様を付けてあらわされる文様です。それがちょうど蛸の足の吸盤をおもわせるところから俗に蛸唐草文様とよばれます。

唐草文様の原型は古代エジプトでまで遡ることができます。
古代エジプトから古代オリエント古代ギリシャ、古代インド、古代中国を経て、飛鳥時代に日本にもたらされました。

古代エジプトでは、蓮をモチーフにした「ロータス」と呼ばれる唐草文様がつくられましたが、各国でその土地の文化と結びつき、さまざまな唐草文様が生まれました。

蛸唐草のような、葉の付いた唐草文様が見られるようになったのは、10世紀初頭の中国です。日本にこの文様が伝えられたのは、鎌倉時代です。この葉の付いた唐草文様の形が蛸の足のように見えることから、「蛸唐草」というよび名が付けられました。

この蛸唐草文様が人気となったのは江戸時代の中頃です。
当時、佐賀県長崎県を中心とした肥前国でつくられていた伊万里焼には、この蛸唐草文様を描いた器が多く作られています。
        
お皿の裏の銘は「富貴長春」(ふうき ちょうしゅん)です。江戸の初めから終わりまでの間よく用いられた銘です。 
『富貴長春』とは、中国のお目出度い縁起の良い熟語です。
「富貴」は、裕福な身分や状態を言います。「長春」は、健康で生き生きした春が長いこと。つまり長命。
「富貴」のシンボルは、牡丹の花。「長春」は花期の長い薔薇がシンボルで中国ではふたつが共存した図柄のモチーフが絵画や工芸に良く使われます。

日本が、中国から磁器制作技術をお手本とした作った初期伊万里 古伊万里焼では、器の高台中の銘文が中国で書かれていた『富貴長春』の4文字をそのまま染付の筆でコピーされたものが多くあります。

このお皿は江戸後期の物と思われます。
裏の模様も2重線で丁寧に書かれています。
       
染付のお皿はどんなお料理を入れても合うのでとても重宝します。

私はどちらかというと蛸唐草文様より、花唐草文様の方が好きです。唐草文様については2012年4月19日のブログに牡丹唐草文。 2012年4月20日のブログに花唐草文の事を書きました。

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バブルの頃、花唐草文様や蛸唐草文様の古伊万里は品薄でとても高く、この5寸皿でも1枚60000円くらいで売られていた記憶があります。

最もその頃の定期預金金利は 今では考えられない程 夢の様な金利、郵便局の10年定期で年間の複利が8%という高金利でした。8%というと、定期預金に預けると10年後には倍になってかえってきたのです。銀行の普通預金でも金利が3%ついた時代です。ですので、高いお皿も飛ぶように売れていた時代なのですね。
       
最近は骨董屋さんに行く機会もめったにありませんので詳しい事は分かりませんが、7寸皿等は殆ど見かけなくなりましたし 5寸皿も少ないかもしれません。たまに出ているととてもお安くなっています。安価のためバブル時に購入した人が手放さずにいるのかもしれません。

団塊の世代の持ち物を整理する子供たちの時代になったら、すごく良い骨董品がお安く出回るかもしれません。

我が家の家訓(祖父から言われていたこと)に「世の中が景気の良い時は物を買う事は差し控えるように。世の中が不景気になった時に物は買う」この教えはバブル崩壊を何度か見てきて正しい教えだったと、地価の変遷だけでなく このお皿1枚の値段を見ても実感しています。